働哭と呼べる何か 封神演義番外編10

       太・或いは伏



残酷な世界の中、それでも光は其処に在る。

 だが―――――――









慟哭と呼べる何か











 世界に満ち溢れる意志を感じる。

 (其処に居るのか)

 見えない誰かへと手を伸ばす。決して触れ合うことのない手を。



 炎の向こうに女の哄笑を聞いた。
 歌うような声だった。



 本当に憎んだのは何だ?
 何に対して怒ったのだ?
 お前は何を失った?

 ――――――全ての元凶はお前自身でもあるのに。



 過去を見つめる術しか持たぬ哀れな者よ。
 我らが幕を開けたというのなら、その幕を下ろすのも又、我らでなければならぬ。
 それが理というもの。



 けぶる水の向こうで女が微笑む。
 嘗て乳を与え抱いてくれた母のように。



 古い友人たちのように溶けていった誰か。
 そうだ。

 お前たちを壊させたりなどしない。





 手を。





 出来ることならお前を救いたかった。
 ―――――それは体に突き刺さる悠久の孤独。

 時間の悲鳴が鼓膜を引き裂いて。



 お前には最早、絶望しかないのか。



 世界を幾度、焦土に変えて。
 国を幾度、作り替えて。
 そしてお前が得たものはたった一つ。



 セセセセセセお前の骸をこの腕に抱けとでもいうのか。



 ああ、だが。

 これで何もかも終わる。





 光が満ちて。





 セセセセセセセセセセセセセ閃光









 「もう、独りは嫌だ」   

















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